トリハロメタンと水道水の安心・安全

トリハロメタンと水道水の安心・安全

トリハロメタンを除去するという効能をうたった浄水器が多く出回っています。
かく言うわたしも、自宅の蛇口に設置しています。
浄水器を使用していない水を比べると、確かに美味しく感じます。
「磁気活水器に排除命令」という記事を書いたこともありますが、浄水器はトリハロメタンなどをきちんと除去しているのかどうかは分かりませんが、飲んだ感覚では、確かに浄水器は水を美味しくする効果があると感じられます。

ところで、この「トリハロメタン」、よく聞く名前ですが、一体どんな物質で、どんな危険性があるのでしょうか?

トリハロメタンとは、メタンに塩素などのハロゲン元素が3つ化合したものの総称です。
トリハロメタンの中で最も毒性が強いのは、「クロロホルム」とされています。

このクロロホルムの毒性についてですが、(独)産業技術総合研究所・化学物質リスク管理研究センター長の中西準子先生のサイトに、「水道水中クロロホルム濃度の規制値の変遷」についての記述がありました。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak446_450.html#zakkan449

それによりますと、1984年のWHOのガイドライン値では、クロロホルムの水質ガイドラインは30μg/リットルで、遺伝子損傷性は「あり」で、「10万分の1の発ガンリスク」とされていました。
ところが、1993年ではクロロホルムの水質ガイドラインは200μg/リットルで、遺伝子損傷性は「あり」「10万分の1の発ガンリスク」と、基準値が大幅に引き上げられています。
さらに2004年のWHOのガイドライン値では、200μg/リットルと変わらないものの、遺伝子損傷性の項目が消え、ガン以外の有害性として「軽度の肝障害」となっています。
つまり、クロロホルムの遺伝毒性は陰性と判断されているのです。
もちろんクロロホルムに毒性がないわけではなく、麻酔作用などの毒性があり、「毒物及び劇物取締法の医薬用外劇物」に指定されていますが、少なくとも普通に水道水を飲む限りでは毒性を気にする必要はないようです。

日本におけるクロロホルムの水道水質の基準値は、60μg/Lであり、WHOの水質ガイドラインよりもずっと低く設定されています。
しかし、『水道水が危険だ』などといって高価な浄水器を売りつける詐欺的な商売の勧誘文句では、『日本の基準は緩くて危険である』ということになっています。
WHOの数字と比較して『危険』などと言っていますが、その数字は1993年以前の数値だったりするのです。

クロロホルムの毒性に関する研究は、近年急速に進められてきましたが、その理由として1991年に起こったペルーの事件が上げられます。
米国環境保護局が、塩素処理により生成する発がん性物質の規制をすることを知ったペルー政府が、発がん性物質によるリスクをゼロにしようと考え、水道水の塩素消毒をやめた結果、水道水が原因でコレラが蔓延し、約80万人が感染し、7千人近くが死亡しました。
ペルー以外にも、発がん性のリスクを減らそうと塩素消毒の強度を弱くしようとする国が多かったため、WHOは矢継ぎ早にクロロホルムの水質ガイドラインを改定していきました。

浄水器には味質を改善する効果はありますが、クロロホルムなどの「有害物質の除去」機能については、あまり神経質になる必要はないようですね。